バレーファン暦２５年ですが、記憶にある限り、全日本女子の監督は男性ばかりでした。
山田重雄、米田一典、横田忠義、小島孝治、吉田国昭、葛和伸元、吉川正博、柳本昌一、真鍋正義（敬称略）といった順番だと思います（大まかです）。
もし将来、女子監督が誕生すると仮定して、可能性があるのは三屋裕子、中田久美あたりだと思います。
ＯＧでも、既に結婚して子供や家庭がある場合だと、全日本監督になるのは難しいです。海外遠征で何ヶ月も家を空けるとか、ほぼ家庭を犠牲にするようなスケジュールを強いられるからです。
三屋さんはまだ独身で、過去にスポーツ科学研究所の要職を務めたり、大学教授やＪリーグ（Ｖリーグではない）理事や、会社社長の経験もあります。
中田久美は、引退から１０年近く「私は指導者にはならない」と公言してきたんですが、心境の変化があったのか、昨年からイタリアのプロバレーリーグ「セリエＡ」のチームに呼ばれてセッターのコーチをしています。コーチ業に積極性が出てきたので、もしかしたら将来（１０年後とか２０年後になるかもしれませんが）は全日本監督にも挑戦するかもしれませんね。
全日本女子チームに女性監督が実現しない理由についてですが、かつて、大林が「女性監督は、女子選手が嫌がることを同性として知りすぎているので、指導するのがかえって難しい」とコメントしたことがあります。
「これを注意したらきっと選手達は気を悪くするだろうな」というツボを分かってしまうので、気を遣ってしまって本気のぶつかり合いの指導が出来にくいと言ってました。
ある程度、女性心理に鈍感な、男性監督の方が腹の底から選手を叱り飛ばせるのでうまくいくということのようです。
余談ですが、東京五輪「東洋の魔女」でキャプテンだった中村昌枝（旧姓河西）さんが、昨年まで全日本女子チームの団長として海外遠征に帯同したりすることが多々ありました。監督という立場ではありませんが、若い全日本選手の精神的な支えとして、大変貢献してくれました。
タレント活動をしているかつての女子バレー選手をいきなり次の全日本監督に抜擢することについてはぼくは反対です。
世界のバレーは年々進歩しています。最近は「リードブロック」というブロック法が生み出され、それを破るために「パイプ攻撃」という高速バックアタックが発明されました。
バレーの戦い方そのものが、大林素子や益子直美の時代とは全く違うので、少なくとも数年間はコーチ業や監督業を専門に勉強してからでないと無理だと思います。海外で今、どういうバレーが主流なのか知識を持っている必要があるし、本当に真面目な監督候補者は、実際に海外留学してコーチングを専門的に学んでいるケースもあります。
もし大林や益子が全日本監督を目指すとしても、ロンドン五輪後すぐに全日本監督に抜擢するのは無理です。タレント活動を休止してコーチングを勉強するくらいの覚悟が要ると思います。全日本監督になる前に、日本国内リーグのＶリーグでチームを指揮する経験も必要かもしれません。
その上で、２０１６年や２０２０年の五輪を目指す全日本監督という可能性はあるかもしれませんね。
日本バレー協会や日本のバレー界は、そのくらい長いスパンで五輪でのメダル獲得計画を練っているということですね。
===補足===
日本以外のナショナルチームでは女性監督だった例がいくつかあります。
中国人の郎平（１９８０年代に活躍した伝説的女子選手です）は、２０００年頃に中国女子ナショナルチームの監督を務めていました。
また、郎平は２００５～２００８年にアメリカ女子ナショナルチーム監督として北京五輪でチームを銀メダルに導いています。
